~LOVE GAME~
翌日。
今日は終業式なので、学校は午前中で終わりだ。
龍輝君と一緒に帰る約束をしている。
私は嬉しい気持ち半面、とても憂鬱だった。
昨日の気持ちがまだ整理できていない。
貴島君も気にしているのか、朝から私を見ているのが分かった。
重いため息をつきながら教室で帰りの支度をしていると、教室がざわめいた。
顔を上げると、廊下に龍輝君が立っている。
廊下に出ると、龍輝君は軽く手を上げた。
「迎えに来てくれたの?」
「何度も連絡したんだけど……」
スマホを見ると、龍輝君からメッセージが届いていた。
そういえば全然見ていなかった。
「ごめん、気が付かなかった」
「あぁ、あのさ。今日一緒に帰れなくなったんだ。そう送ったんだけど、返事がないから教室まで来た」
「え……?」
帰れなくなった?
昨日は一緒に帰れるって言っていたのに……。
胸がざわついて、スマホを握る手に力が入る。
「どうして?」
「ちょっと用が出来て……」
「用……?」
ドクンと胸が鳴る。
「どんな?」
「ちょっと野暮用」
そう言う龍輝君はあまり理由を言いたくなさそうだ。
「塾……?」
「あぁ、そんな感じ」
そんな感じって何……?
またはぐらかすような言い方に胸が苦しくなった。
そうやって嘘をついてあの女の子と一緒に過ごすの?
本当は、私と過ごしたくないだけなんじゃないの?
「嘘つかなくていいよ。他に好きな子でも出来た?」
そう呟きながら聞くと、「え?」と怪訝な顔をされた。
「塾だなんて嘘ばっかり。私と別れたいならそう言ってくれてもいいんだよ」
「楓? 何言ってるんだ?」
龍輝君は混乱した表情をしている。
堰を切ったように気持ちが止まらない。
こんなことを言ってはいけないってわかっているのに、口が止まらないの。
「意味が分からないんだけど……」
「本当にわからない? よく考えてみてよ」
私の声は震えていた。
見つめる龍輝君の顔が歪んでくる。
「泣くな。どうしたんだよ、楓?」
私の腕を掴もうとするその手を振り払った。
「楓……?」
「春岡、お前昨日中学生の女の子と一緒だっただろう?」
私の後ろから貴島君がそう声をかけた。
「貴島には関係ないだろう」
龍輝君はキッと貴島君を睨み付ける。
「あるよ。昨日、松永さんと集会室から見ちゃったんだ。お前が女子中学生と帰るところ」
「あれは……」
龍輝君はハッと言葉を詰まらせて、どう言おうか考えている様子だった。
考えるようなことなの?
「言い訳なんて聞きたくないよ。私より、その女の子を優先するんでしょう?」
「楓、そういうことじゃない……」
「もういい。今日もどうせ、その子の所に行くんでしょう? 早く行きなよ」
私はグイッと龍輝君を押して距離を取る。
「話を聞いてくれないか?」
「聞きたくない」
私は教室に戻り、鞄を持って飛び出した。
「楓!」
龍輝君の呼び止める声が聞こえたが、無視をして学校から飛び出して行った。