~LOVE GAME~
「あ、ねぇ、龍輝君。射的できる?」
屋台のひとつに射的があり、私は龍輝君の手を繋いだまま、クイッと引っ張った。
特に射的がやりたいというわけではなかったんだけど、なんとなく、話題が欲しかったというのもあった。
「あまりやったことないけど……」
そういいつつ、射的の屋台に入っていく。
3段くらいある棚にはお菓子やおもちゃ、人形などが置いてあった。
お店のおじさんから、小さなコルクの的を5つ受け取り、手もとにあるおもちゃの銃をかまえる。
「楓、何が欲しい?」
そう聞かれて、射的の台を眺める。
「じゃぁ、あれ」
2段目にある、小さなクマのキーホルダーだ。
薄い茶色で目がクリクリしていて、とても愛らしい。
「難易度高っ」
そう笑いながらも、そのキーホルダーに向けてかまえた。
パシュ。
良い音をならしながら、綺麗に外した。そして、3発目で見事にキーホルダーを落としたのだ。
「はい、どうぞ」
「凄い! 龍輝君、上手だね」
手もとにコロンとキーホルダーを乗せられ、嬉しくなってはしゃいだ。
「ありがとう、大切にするね」
「うん。あ、楓。お腹空かない? 何か食べよう」
龍輝君は私の手を取って他の屋台も見て回る。
気が付けば、常に手を繋いで会話も自然と出来ていた。
たこ焼きやかき氷を食べ、スーパーボウルすくいなどもやってみた。
そして、龍輝君がフッと時計を確認する。
「楓、もうすぐ花火が始まるから見える場所まで移動しよう」
「見える場所?」
「この神社の上にある高台から、花火がよく見えるよ」
龍輝君は私の手を引いて、神社の裏から高台の方へ回った。
高台の先に高い建物はないため、景色がいい。
すでに人が集まって来ていたが、それでもまだ空いている方だった。
すると。
「龍輝先生?」
可愛らしい声に龍輝君が振り返る。
ピンクの浴衣を着て、髪をお団子にして手を振って歩いてこちらに来るのはあの女子中学生だ。
えっ……。
反射的に龍輝君の手を離そうとしたが、逃がさないとでもいうように、ギュッと繋がれた。
「こんばんは。凛ちゃんも花火を見に来たの? 大丈夫?」
「うん! あっちにはお母さんもいるから心配ないよ。あ、もしかして先生の彼女さんですか?」
凛ちゃんと呼ばれた女子中学生はクリクリした目で興味深そうに私を見て声をかけて来た。
「龍輝先生にはお世話になってます」
「先生?」
凛ちゃんに先生と呼ばれる龍輝君。
どういうことかと龍輝君を見上げる。
「紹介するね。彼女は吾妻凛さん、中学三年生。俺の家庭教師のバイト先の子」
「家庭教師!?」
龍輝君、家庭教師のバイトしていたの?
あれ、でも確か……。
「うちの高校って、バイト禁うぐっ……」
バイト禁止じゃなかった? と言おうとして龍輝君に口を塞がれる。
凛ちゃんは不思議そうに見ていたが、龍輝君は何でもないよと笑顔で言った。
「先生に勉強を教えてもらっています。お姉さんのことは時々先生から聞いてましたよ」
「え? 私のこと聞いていたの?」
私が驚くと凛ちゃんはニコニコと笑顔で頷く。
「初恋の人だって」