~LOVE GAME~
「凛ちゃん……、来月、心臓の手術するんだ」
「え……」
龍輝君の台詞に言葉を失う。
「学校に行けても月に数回。家で大人しくしているか、入院しているか……。だからつい、同情してしまって楓よりあの子を優先してしまった」
「でもあの子、うちの高校に来ていたよね?」
校門で嬉しそうに龍輝君に手を振って一緒に帰っていた。
元気そうな子に見えた。
「この前のだろ? まさか、見られているとは思わなかった。あの時は、久しぶりに学校へ行ったから寄ってみたんだって言われた」
「そう……」
「それにバイトの契約は夏休みまでだからもう終わったんだ。……あぁ、でもなに話しても、言い訳にしかならないな」
龍輝君は額に手を置き、ため息をつく。
「これだけは信じてほしい。楓が心配するようなことは何もない。家庭教師のバイト中だって、必ずあの子の親が家にいたし、俺もあの子もお互いに恋愛感情とかは抱いていないんだ」
「……本当?」
凛ちゃんには同情する点は多いし、龍輝君の力になってあげたいという気持ちは理解できた。
でも、本当に気持ちがぐらつくことはなかったの?
「本当です!」
急に後ろから声をかけられてびっくりする。
振り返ると、凛ちゃんが軽く肩で息をしていた。
「走ったのか?」
龍輝君が慌てて駆け寄るが、「早歩きしただけ、大丈夫!」と押しのけられた。
「彼女さん、ごめんなさい。私のせいで誤解させましたよね」
「え……」
「さっき様子がおかしかったから、もしかしたらと思って探しました。やっぱり私のせいで不安にさせてた……」
シュンとする凛ちゃんを龍輝君がベンチに座るよう促す。
「私、龍輝先生と友達になれて嬉しかった。でも、そもそも友達っていなかったから距離感とかわからなくて、それで彼女さんに嫌な思いさせたのかもって……。でも誓って言えます! 私たち彼女さんが心配するようなことは何一つありません!」
一生懸命話す凛ちゃん。
それを見て、私は肩にそっと手を置いた。
「興奮するのも、身体によくないんじゃないの? 大丈夫?」
「はい……」
落ち着くよう背中をさすると、凛ちゃんはゆっくり呼吸をした。
「凛ちゃん、教えてくれてありがとう。ちゃんとわかったから心配しなくていいよ」
「彼女さん……」
「楓だよ。確かに、二人のこと見かけて不安になったよ。龍輝君と付き合いだしたばかりで、浮気しているのかなとか、本命が他に出来たのかなとか、挙句、塾行っているとか嘘までつかれて」
フフッと笑いながら話すと、龍輝君は気まずそうに俯いた。
「でも、ちゃんとわかったから」
「楓さん、ありがとうございます」
凛ちゃんは深々と頭を下げた。そして、広場の入口で待っていた母親の所へ戻っていった。