本当はずっとキミだけを…。


「とにかく、もうあたしのことなんか忘れて。じゃあ」


そう言って、高津くんの横を通り過ぎた時だった。


「待てよ…」



ガシッと腕を掴まれてグイッと引っ張られると



「キャッ…」



高津くんの腕の中に包まれて、きつくギュッと抱きしめられた。




「ヤメッ…」


「止めない。そんな悲しい顔してる梨華ちゃんを放っておけない」



「だから…あたしが好きのは」



「アイツでもいい!!それでもいい!!アイツが好きな梨華ちゃんごと抱きしめるから!!」


高津くん…


「俺なら、梨華ちゃんにそんな悲しい想いはさせない…だから…」



「高津くん…」



「だから…もう会いたくないなんて言わないでくれよ…」


頼むよ…とあたしの肩に顎をのせてギュッと抱きしめてくる高津くんの背中ごしに見えた空は


今にも泣き出しそうな悲しみに染まった曇り空でした。





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