本当はずっとキミだけを…。

「・・・・いま、なんて?」


いま、確かにあたしの事・・・・・


「行くなよ・・・行くなよ、梨華・・・・・」




聞き間違いじゃなかった。
大輔くんがハッキリと、あたしの事を「梨華」って呼んだ。




立ち止まったまま身動きできないあたしを



「行くなよ・・・・・」



後ろから、大輔くんの腕があたしの体を包み込んだ。


肩に、大輔くんの顎がちょこんと乗って、耳元で大輔くんの息遣いが聞こえた。




なんで?なんで・・・こんな事になっているの?



振りほどこうと思えば、振りほどけたのかもしれない。
だけど、あたしは振りほどこうとしないまま大輔くんの腕にソッと触れた。


もしかしたらあたしは、ずっとこうなることを望んでいたのかもしれない・・・・。



次第に強くなる大輔くんの腕の力を感じながら、そんな事を思っているあたしがいた・・・・。








< 141 / 164 >

この作品をシェア

pagetop