月に祈りを

「おーい!お前何ぼけっとしてんだよ!試合近いんだぞ!気ぃ引き締めろよ!」

「はい!」


目の前ではグラウンドで練習している野球部さんたち。
その中にいるゆー。

リーダーシップってああいうこと?

みんなをまとめているゆーは、頼もしい感じがした。

寒くなってきて、空を見上げた。
雲行きが怪しい。

わたしは一人、バックネット裏のベンチに腰掛けて、練習風景を見ていた。
まだわたしと出会う前の、ゆーの姿を。

「雨降ってきちゃうのかな…」

わたしはさっきからうつむいてばかりいる。
あまり顔を上げたくないんだ。
顔を上げれば大好きなゆーの顔と、

ポツ… ポツ…

ザァアアアアアー…


「雨が降ってきたので、練習中止します!」

ベンチから声をかける、元カノの姿…


いや、今はまだ今カノなのか…

そんなことを考えているわたしは、一つ決意していることがあるんです。

それは…

ゆーをわたしのものにすること。

いや、取り戻すこと。

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