不器用恋愛~甘いキスをあなたと♥~
多少は気づいていた気がする。
鈴加の隣にいた智也が、俺と同じ目で鈴加を見ていたことくらい。
「どうすっかな―……」
フェンスにガシャンともたれ、空を見上げた。
だからと言って、鈴加を手放すつもりなんてさらさらない。
でも智也の方が鈴加のことを、きっともっと知っている。
俺は……何も知らないんだ。
鈴加のことを何一つ、ちゃんと知らない……
流れていく雲をただジッと見つめると、さっきまで無かった不安に襲われた。
鈴加は渡さない。
鈴加は俺のモノだ。
でも、この不安はなんだ……?
鈴加は俺だけだよな?
俺だけのことを好きなんだよな……?
わかんねぇ―…
ちゃんとした恋愛してこなかったから。
――恋の仕方がわからない。