不器用恋愛~甘いキスをあなたと♥~
「……英語の辞書、返してもらおうと思って。あたし、次授業で使うから」
「あっ、そっか。悪いな」
「……いいえ」
すぐに辞典を取りに行ってくれた司先輩。
「はい。わざわざ城田まで付き合わせちゃってごめんな」
「あぁ、別にいいですよ」
ヒョコとあたしの後ろから出てきた蘭。
「行こ……。蘭」
「えっ!?もう?」
「用事済んだし」
さっきからイライラが止まらない。
司先輩は何も悪く何のに。
「いいから行こ……」
司先輩に背中を向けて、歩き出そうとした瞬間―……
――グイッ
「きゃっ!」
腕を勢いよく後ろに引っ張られた。
「なんで、機嫌悪いの?」
「……え」
腕を強く掴んだまま、ちょっと不機嫌な顔を向けてくる司先輩。
何で司先輩が不機嫌なの……
そんな先輩にさらにイライラした。
「別に怒ってなんかいません……」
「嘘だろ。だったら俺の目、見ろよ……」
「っ……」
自然にうつ向いて喋ってしまっていたあたし。
先輩の目を避けるように……
「とにかくもう次の授業があるので……」
冷たく言い放ち、腕をほどいた。
そして蘭の腕を引っ張って、司先輩の教室から離れていった。