不器用恋愛~甘いキスをあなたと♥~
「ちょっといいですか……?」
睨むような視線で俺を見てくる。
こいつ、上級生のクラスによくここまで堂々と……
「あぁ―……」
心配そうに俺を見ている夏輝の横を通り、教室を出た。
黙って何も話さない、智也が向かったのは屋上。
少し強く吹いている風が、ウザったい。
「俺、ここで鈴加にコクりましたから」
ずっと無言だった智也が、俺に言い放った第一声。
「そう……?」
わざと、冷静なフリで返した。
「なっ!あんたはそれでいいのかよ!!」
「……」
明らかに、イラついた様子で俺に食って掛かってくる智也。
「俺、あんたのそういうところが、マジ嫌いなんだよ。何でも余裕ぶってさ、冷静すぎるその態度がっ!」
俺だって嫌い。
本当は今だって、智也にキレそうなのをグッと抑え込んで立っている。
なのに、いらない理性が、俺を冷静にさせる。
「あんたにはわかんねぇだろ―な。恋で苦しむような奴の気持ちが……」
「っ……」
「鈴加は今、あんたのことを想って悩んでいる。そんな鈴加を俺は少なくともあんたよりは理解できる」
冷たく突き刺さるようなセリフ。
「恋の苦しみは味わった人にしか、わかんねぇからな」
あぁ―……そうだな。
俺もこんなに悩むとは思わなかった。