不器用恋愛~甘いキスをあなたと♥~


でもそれは無意味なことだった。



そんなこと関係なく、母さんは俺を嫌っていたんだ。



「愛なんて知らなかった……。誰も俺を愛してくれてなかったから……」



友達には恵まれた。



夏樹という信じられる友人に……



でも、愛を捧げるような……そんな人には恵まれなかった。



ってか一生愛なんて分からず、生きていくんだと思った。



「……っ、うぅ―…」



今もなお、俺を抱きしめていた鈴加の体が小刻みに震えていた。



「鈴加……?」


「……あたしは愛してます。司先輩を……司先輩だけを愛しています……」


「っ……」



泣きながらそう言う鈴加に、発作的に体を離し、その代わりに唇を塞いだ。



「ふあっ……」



角度を代えながら、何度も何度もキスをした。



「んっ…あっ……」



深くなれば深くなるほど、鈴加は涙を流した。



俺が泣けなかった分を、全て引き取ったかのように……



「鈴加……」


――カチャッ



ゆっくりと眼鏡を外して鈴加を見た。



「あっ……」




< 257 / 349 >

この作品をシェア

pagetop