不器用恋愛~甘いキスをあなたと♥~
「あたしが好きだったのは、本当の孝太じゃなかったのかもしれない。そう思ったら……」
そこで言葉をのみ込んだ鈴加。
「いいんじゃねぇ?」
「えっ……」
そう言った俺の言葉に、うつ向いていた顔を上げた。
「その孝太っていう人を好きだった。それは事実なんだからさ」
「司……先輩」
「たとえ騙されてたとしても、そいつを好きだった気持ちは嘘じゃないんだから……」
凄く好きだったんだろ…?
その孝太ってヤツを……
「って、何語ってんだろうなぁ―。俺って……え……」
ははっと笑ったのに、すぐにその笑いさえ止まった。
「……なんで泣くんだよ」
「っ……だって―……」
ポロポロと涙を流す鈴加。
「ったく。お前は本当によく泣くヤツだな。」
ちょっと笑みを溢しながら、頭を撫でた。
「あたし……」
「ん?」
「あたし頑張りますっ。ちゃんと前を向いて歩けるように。ちゃんと……孝太を思い出に出来るように」
そう決意した鈴加に俺はただ「そっか…」と言って、頭を撫でてやることしか出来なかった。