不器用恋愛~甘いキスをあなたと♥~
「あっ、そうだ。これ」
そう言ってバッグに走り寄り、ニッコリ笑って手を開いた。
……ん?
「これ、今日調理実習で作ったんですけど」
そう言って俺に差しだしてきたもの。
「えっ、俺がもらっていいの?」
「あっ、はい。迷惑じゃなかったら、なんですけど」
ちょっと心配そうに俺を見上げる瞳。
「いや。ありがと……」
鈴加からそれを受けとる。
透明のフィルムに包装されて、綺麗にラッピングされているクッキー。
……だよな?
これは……?
「みっ!見た目は悪いですけど!あ、味は大丈夫ですから!!」
ふっ、必死だな。
俺の手に握られているのは、真っ黒こげのクッキー。
ある意味、ここまで焦がす鈴加は凄いな……
「や!やっぱりいいです―っ!」
叫びながら、そのクッキーを取り返そうとした鈴加の手を遮り、ピンクのリボンをほどいて口に入れた。
一瞬苦味がしたが、すぐにクッキーの甘い感覚が口いっぱいに広がってくる。
「うん……うまい」
「へっ!?」
間抜けな顔。