短編■ 幸薄な僕
それから、意味もなく半開きのアンニュイな唇を作るようになったんだ。
キメ顔を常に貼付けて、イケメン男に媚びるんだ。
子犬みたいな口を意味なくしてる。
小学生の頃の担任が言っていた。
“だらしないから口は閉じなさい”と。今なら差別になる問題発言かもしれないが、一理ある。
閉じれるならば閉じるべきだ。開けっ放し。
それに歯が乾けば口の中に雑菌が増えるんじゃないのか。
僕が彼氏なら、キメ顔ばかりの彼女よりも不意に見せる素の笑顔を見たい。
しかしまあ、クラスの女子はキメ顔ばっかだ。
お陰でクラスの男子はデレデレしっぱなし。
―――騙されないない、僕は。