青空のむこうに~バスケに恋して~
「…星羽に…モルって呼ばれてる男の子いる…?」
「…え?」
私が聞くと、明らかにその人物を知っているという顔をしたトージ。
トージの瞳に戸惑いの色が広がっていくのがわかった。
「…前に、一度話した事あったよね?見ず知らずの人とメールしてて励まされたって」
「…ああ」
「それがモルなの」
私はケータイを取り出して待受画面を見せた。
「この風景、トージも知ってるよね?合宿先から帰る途中のサービスエリアでとられたって画像」
「…」
「…決勝戦の会場で、試合を見に来てた他校の男子生徒が言ってた。『モルのバスケはすごかった』って。うちの学校にモルって呼ばれてた事のある人はいなかったから、星羽側だと思ったの。トージ、知ってるんでしょ…?」
トージの表情は困惑したまま。
でも、何も言わずにただ黙ってるだけだった。
「…私、この人がいたから今の自分がいるって思ってる。モルが一筋の光をくれたから、私はトージと出会えたんだ…。でも、もし…モルが私に好意を持ってくれて私の幸せのために身を引いたんだとしたら…私だけ幸せになる事はできない」
そう言った時、こらえ切れずに涙が落ちた。