年上王子様
「この辺りでいいか?」
そう言われて、窓の外を見ると、
言っていたショッピングモールを少し過ぎたくらい。
「はい、全然いいです!ありがとうございました。」
私はシートベルトを外して、
ドアに手をかけた。
その瞬間、頭をよぎったこと。
『このドアを開ければ、私と速水さんとの接点はなくなるんだ…』
私は、なぜか泣いてしまった。
今の私は、速水さんに背を向けていて、
きっと速水さんは私が泣いていることに
気付いてないだろう。
「ゆゆ?どうした?」
速水さんが、外に出ない私を不審がっている。
早く、出なきゃ…!
「すっ…すみません!今…出ま……きゃっ」
私が外に出ようとすると、
腕を引っ張られ、私は速水さんの胸の中。
え?
「ゆゆ、なんで泣いてんの?」
速水さんはそう言って、
私をぎゅっと抱きしめる。
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