年上王子様
私がロビーの椅子に腰かけ、
5分ほど待つと、
速水さんがエレベーターから走って降りて来た。
「ゆゆ!どうしたんだ?会社まで来て…」
相当急いで来てくれたのか、
速水さんの額には汗がキラリと光っている。
「ごめんなさい!でも、どうしても早く返事したくて…」
私がそう言うと、速水さんは目を丸くした。
「ここではちょっと困るから、場所を変えよう?」
「えっそんな!お仕事残ってますよね?」
お仕事があるのに、
私の勝手な都合で速水さんの時間を拘束できないよ!
「大丈夫。もう終わったから、荷物取ってくるよ。ちょっと待っててな?」
速水さんは私の頭を撫でて、
また走ってエレベーターに乗った。
私はそれだけで顔がゆるんでしまい、
幸せな気分になった。
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