年上王子様
「ごめんなさい!私、慣れてないから恥ずかしくて…」
私は速水さんの体をぎゅっと抱きしめながら言う。
速水さんはそれを黙って聞いてくれた。
「でも、矛盾してるかもしれないけど、いっぱい抱きしめてほしいの!」
私は抱きしめる力をさらに強めて、
叫んだ。
涙を流しながら。
そしてやっと速水さんは口を開いた。
「ゆゆの気持ちはわかった。ゆゆって結構大胆なんだな。」
速水さんは笑いながら振り向いた。
はい?
私が、大胆?
どゆこと?
「こんな公衆の面前で、こんな風に抱きしめられるとは思ってなかった。」
公衆の面前…。
私はおそるおそる周りを見た。
こそこそと話すカップル。
ニヤニヤと笑う中学生の男の子。
私達を指さす小さな女の子に、
その子を押さえるのに困っているお母さん。
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