家の中に消えた男の姿を見逃さなかったが、噎せ返る花の香りに断念し、振り返り上半身だけの侵入者に狙いを定めた。


「言い訳は‥?」


冷ややかな眼差しで、なぜかアルトよりバスに近い音域の声で、ゆっくりと老婦人へ語りかけた。


「ご‥ごめんなさい…」


神妙な面持ちで、そしてなぜか怯える様子で、不可思議な体勢のまま話しだした。


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