奴
「ベランダをお庭にしようと思って‥」
顔色を窺いながら恐る恐る話す。
「息子が一生懸命作業してくれたの‥」
嬉しそうな笑顔を見せる。
「作業中に誤って壁が壊れてしまって‥」
少し困惑した表情になる。
「何度かお伺いしたのだけれどお留守で‥」
哀願するように手を伸ばす。
ピシャリと手をはねのけ、斜め45度に見上げるように
「それで‥」
アルトの声で反応した。
自分の声に、先刻の何者か解らない声からの復活に少しの安堵。