奴
あっ!
急いで隣家の玄関へ走り、ドアホンを勢いよく連打するが無反応。
仕方なくベランダを超え隣家に侵入し、老婦人に近寄ると‥
「ごめんなさい‥
息子は悪くないの…」
あくまでも息子を守ろうとする母親の姿が痛々しく、怒りの感情は影を潜めていった。
老婦人を抱き起こし、部屋へ運び、先刻の男を探したが気配すら感じられなかった。
「薬箱は‥?」
既に血は止まっているようだったが、申し訳なさから小さく呟いた。
か弱く指さされた先には、上質のチェスト
沢山のフォトスタンドの影に隠れるように、薬箱が置かれていた。