また、明日~天使の翼を持つキミへ~
帰り道。
「なぁ、菜緒」
隣を歩く親太郎が、おもむろに話し掛けてきた。
あたしは、返事をするかわりに親太郎を見上げる。
「明日、吉野公園行かね?」
真っ直ぐに前を向いて、頭の後ろで両手を組んでいる。
「そうだね。明日はいい天気だって言ってたし、息抜きに行ってみようか!!」
あたしが声を弾ませると、親太郎はあたしを見下ろし微笑んだ。
その微笑みが、オレンジ色に染まっている。
「お弁当、作るね」
あたしも、親太郎を見上げて微笑んだ。
「おう」
「入れてほしいものある?」
「いつものやつでいいよ。おまえの弁当、結構うまいから」
そう言って、親太郎はニヒっと笑った。
夕日の効果ってすごいなと思った。
街中がオレンジ色に染まってくれたおかげで、あたしの赤面をごまかしてくれたから。
長く伸びるふたつの影。
2人の距離は、とても近かった。
ハニカミがバレないように、少しだけ顔を伏せる。
隣からは、親太郎の鼻歌が聞こえてきた。