また、明日~天使の翼を持つキミへ~
「うおーっ!!」
展望台について、先にはしゃいだのは、親太郎だった。
坂道を歩いているときにはあたしの後ろにいたのに、いつの間に前に出てきたんだか。
「おいっ!!菜緒も早くこっち来いよっ。海、わっぜキレイだぞ」
展望台の柵に両手をつき、あたしを振り返った。
あたしは、ベンチにバッグを置き、親太郎の隣に並んだ。
その瞬間、あたしの体が浮いたような気がした。
眼下に広がるのは、太陽の光りを反射する広い海に。
桜島と市内を行き来する桜島フェリーが、小さく動いていて。
今日も立派に胸を張って立っている桜島を見てみると、蟻のように小さい車が信号か何かでたくさん停まっているのが見えた。
「やっぱり、ここからの眺めは最高だね」
桜島を見ながら親太郎に言った。
親太郎は、『ああ』とあたしと同じように桜島を見ながら返事した。
「俺、鹿児島に生まれてよかった」
あたしは、桜島から親太郎の横顔に視線を移した。
「桜島を見てるとさ、思うんだ。病室からも桜島が見えただろ?あれが噴火する度にさ、何かすげーパワーもらってる気がしてさ」
「………」
「そんなこと今まで一度も思ったことなかったけどさ、桜島が噴火する度に、命を吹き込まれてる気がすんだよな」