また、明日~天使の翼を持つキミへ~
どうにか“花時計”の場所まで戻ってきたあたし達。
そこで、親太郎は一度吉野公園を振り返った。
遠くに見える桜島から、灰色の雲がこちらに向かって伸びている。
それでも親太郎は逃げずに、ジッと公園を見ていた。
目に焼き付けるように。
心に刻むように。
花も、木も、遊具も、芝生の広場も。
そして、ここで遊んでいた小さい頃の思い出も。
親太郎は全てを振り返って見ていた。
きっと、親太郎の体は悟っていたんだろう。
これが、吉野公園に来る、最後になるということを。
親太郎とあたしの右手についているミサンガが、灰を運ぶ風に揺らされた。
そして。
何かを知らせるように、イチョウの木も鳴いていた。