また、明日~天使の翼を持つキミへ~
「どうした?」
突然足を止めたあたしを、親太郎が不思議そうに振り返った。
あたしは親太郎に悟られないようにと、咄嗟に笑顔を作り
「あの抱きマクラ、可愛いなと思って」
そう言って、廊下で売られていた紫色のブタのぬいぐるみを指差した。
「抱きマクラだぁ? んなの自分を抱いて寝ればいいだろ?」
親太郎は、眉を寄せあたしを上から下へ目でなぞった。
「あのブタより抱き心地よさそうじゃん」
頭の後ろで両手を組んでケラケラ笑うと、『まるまるとよく成長しましたね』なんて言った。
あたしの眉間にも、グッとシワが寄る。
し〜ん〜た〜ろ〜〜!!!
あたしのこめかみに浮かぶのは、怒りマーク。
それを見た親太郎は、少し体をびくつかせ苦笑いをした。
「じょ、冗談じゃん、ハハッ…軽いジョークだって……。そんなに欲しけりゃ、あとで買ってやるから。な? だからそんな怒んなって」
顔の前に両手を出してあたしをなだめる親太郎。
あたしは、フンっとそっぽを向きひとり音楽室を目指した。
そのあとをトボトボ追い掛けてくる親太郎。
その足音がすごく遠慮がちで、怒っているはずの顔が徐々に微笑みに変わっていった。
やっぱり、親太郎には敵わない。