また、明日~天使の翼を持つキミへ~
約15分間のライブが終了した。
額から汗が流れている親太郎は、体にこの会場の雰囲気を記憶させるように両手を開いて深呼吸をした。
“おい、菜緒。俺の夢聞きたいか?”
“は? なにいきなり”
“そうかそうかそんなに聞きたいか。そんなら特別に教えてやろう”
いつか語った親太郎の夢。
希望に満ちた瞳で、興奮気味に話していた。
その日から2年が経ち。
その夢が叶った。
病気と闘い、辛い治療に耐え、親太郎は自分の夢を叶えたんだ。
「親太郎っ!!」
会場の盛り上がりに負けないように、口に手を当て舞台上の親太郎の名前を呼んだ。
瞑っていた目を開け、あたしを見下す親太郎。
「おめでとっ!!!!」
あたしが言うと、親太郎はニッと白い歯を見せてピースサインを向けた。
あたしもピースサインを返す。
舞台の照明が落ち、親太郎達は名残惜しそうに舞台袖へと戻って行った。
あたしは気持ちを切り替え、さっき片山さんが立っていた方に目を向けた。
コソコソと逃げるようにして会場を出ていく片山さん。
あたしは拳を強く握り、片山さんの後を追った。