また、明日~天使の翼を持つキミへ~
あー、もう。
いちいちこんな事を気にしてたらきりがない。
あたしがここでやきもきして何になる。
自分に深く考えるなと言い聞かせ、“翼をください”の歌詞を口ずさんだ。
「あーあ。相変わらず、わっせ音痴だな」
背後で、ぼそりと聞こえた声。
振り返るとそこには、2人っきりの“甘い”練習をしているはずの親太郎が立っていた。
『わっせ』これは、“とても”という意味だ。
なんて失礼な。
ブスっと、頬を膨らませる。
ただでさえイライラで爆発寸前だったのに、それに拍車をかけた。
「練習はどうしたのよ」
親太郎をギロリと睨みつける。
「したよ。ミスしやすいポイントをチェックして、あとは好きなように弾けって言ってきた」
「は? それだけ?」
「だって、ピアノは俺より、片山さんのほうが詳しいだろ。別に俺が教えるようなことは何もないじゃん」