また、明日~天使の翼を持つキミへ~
……親太郎。
あたしの目の前で、親太郎が照れ臭そうに首筋をカリカリかいている。
『えー……どうしよう。え、もうカメラ回ってる?』
親太郎の声だ。
病室のベッドに座って、カメラに向かって話していた。
『母さん、ちょっと外に出てて。話しづらいじゃん』
『はいはい。終わったら、この赤いボタン押すのよ』
『わかってるよ』
スクリーンの向こうの親太郎が、口を尖らせていた。
でもすぐに、カメラに向き直りまた照れ臭そうに話し出した。
『えーと。普段、感謝の気持ちとか、うまく言葉にして伝えられなかったので、今から、ちょっとカメラに向かって伝えたいと思います』
親太郎は一回咳払いをすると、背筋を伸ばしてニット帽をきちんと直した。
『えー……まずは、父さん。最近、ちょっと父さんに反抗したり、無視したりして、父さんを困らせてばかりだったよな。ごめんな。言葉を考えずに父さんに言ったことで、父さんをすげー傷つけてばっかだったんじゃないかなって、反省してる。でもな、あれ、ただの照れ隠しだったんだ。なんか、自分の考えてることを見透かされるとさ、妙に恥ずかしくなって、父さんにバカみたいにあたってた。俺がこんな病気になって、父さん今まで以上に仕事頑張ってたの、本当は知ってんだ。俺の治療費の為に、必死になって働いてくれてたこと。そんな父さん、すげーって思ってた。父さんは、ずっと俺の憧れだった。大人になったら、父さんみたいになるんだって、実はずっと思ってた。俺の自慢の父親だった』