また、明日~天使の翼を持つキミへ~


乱暴にエレベーターのボタンを押して、ため息をついたその時。

 
ここから少し離れたところに、おばさんの姿を見つけた。


廊下の椅子に座り、一点を、ジーッと見ている。


あたしが近付いても、顔を上げない。


放心状態。

瞬きもせず、ただ、廊下を見下していた。



「……おばさん?」


静かな廊下に、あたしの声が響いた。


しかし、おばさんには届かなかったようだ。


「おばさん……」


もう一度小さく呼ぶと、ピクっと肩が動いた。


ようやく顔を上げてくれたおばさん。


その瞳は、真っ赤だった。


あからさまにそらされた視線。


前髪をかきあげ、ぎこちなく笑った。



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