また、明日~天使の翼を持つキミへ~


「な、何もないわよ。ちょっと仕事で色々あってねぇ。少し疲れが出たのかも」


おばさんは、ニコっと笑った。


その笑顔を見てしまったら、もう、先の事は何も聞けなかった。


「さぁ、そろそろ病室に戻らなきゃね。菜緒ちゃんも、暗くならない内に早く帰って。最近は、不審者が多いから」


そう言って、椅子から立ち上がった。


「気をつけて帰るのよ」


あたしに背中を向けて歩き出したおばさん。


「待って下さい」


思わず、呼びとめてしまった。


おばさんが、クルリと振り返る。


「明日の検査って、長くかかるんですか?」


違う……聞きたいことは、それじゃない。


検査入院になった、原因が知りたいのに。


「すぐに終わると思うわ」


おばさんの力なのない頬笑みに、


「そうですか」


あたしも、微笑みながら答えるしかなかった。



おばさんの背中を見送り、窓の外に視線を移した。


一枚の枯葉が、ハラハラと風に舞った。


明日……学校が終わったら、すぐに来よう。


 
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