また、明日~天使の翼を持つキミへ~
先生の口から出てくる言葉達は、どれも現実味を帯びていなかった。
まるで、ドラマのセリフのよう。
先生は、一流の俳優だ。
どの俳優よりも、演技がずば抜けている。
その話を真剣に聞いている親太郎も同じ。
あたしが監督なら一発OKだ。
「何か質問はある?」
ほら、すごい演技力。
「……いいえ。大丈夫です。先を続けてください」
ほら、こっちも。
「これからの治療は、かなり苦しいものになる」
「………」
「“抗がん剤”って、聞いた事あるよね?」
「……はい」
「1週間~10日前後点滴をし、ガン細胞をできるだけ減少させるんだけど。嘔吐・脱毛・肝障害などの副作用がかなりの頻度で現れる」
親太郎は、膝の上で拳を握った。
背中にも、力がこもっていた。