望美 ~ママ、離れないわよ。私は絶対に!~

その日の夕方

政子の部屋


一足早く仕事から帰ってきた義昭に政子は堕胎する決意を語っていた。





「そ、それじゃあ母さんに『誓約書』を?」と神妙な面持ちの義昭。


政子は吹っ切れたように、
「えぇ!突き出してやったわよ!
お義父様は私に理解が有るみたいだし、これで誰も私を追い出すことは出来なくなったわ!」
言いながらも、
「ただ…
ただ、私って卑怯者よね……。
望美を殺して、まるで望美を踏み台してまで、図々しく生きるなんて……。こんなこと…。こんな…。」
と自分を責め、嘆いた。


そんな政子を見た義昭は、
「すまなかったな…。本当にすまなかったな…。」
とやりきれない気持ちで目の涙を浮かべている。


「貴方は悪くないわ!」
と必死にかばう政子。

しかし義昭は、
「オレがあの晩…、政子が不妊治療から帰ってきた晩に一緒にいてやれば、こんなことにはならなかったのに!オレは本当、男として情けねぇよ!!オレは…。オレは…。」
と責任を感じていたのだった。


政子はできるだけ感情を込めず淡々と、
「御曹司が何言ってるのよ!いいの…。
私もう堕胎するって決意したから…。」
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