望美 ~ママ、離れないわよ。私は絶対に!~
「お、お母様!!
これはいったいどうしたって言うんですの!!!」


変わり果てた鶴子の姿を見て、駆け寄る美華。

洗面台の周りには鶴子の毛髪が一面に散乱している。




すると鶴子は震えた声で、
「の、のぞみ……。
望美っていう女の子が、鏡の中から手をだしてきて……髪を掴んで、引きちぎっていって……、一本も残らず、一本も…一本も…。」と蒼白い顔をしながら答えた。



女の看板、ましてや女優にとっては命でもある髪の毛を鏡から出てきた手によって引き抜かれてしまいもはや正気を失っている様子の鶴子は、
「ウギャアアアァァァ!!!」
と言いながら錯乱しだした。



「望美が!
どういうことなんだ!!」
鶴子の話を聞き、恐怖を感じる義昭。


(復讐だわ!!望美の収拾のつかない復讐が遂に始まってしまったんだわ!!)
政子はそう思うと、ワナワナと体が震えてしまい、立っていられないほどだったのだ。



「信じれないわ!!
一本も残らずよ!!一本も…。なんて悪質な……。アアアァァァ!!」
実母に襲いかかった悲劇に泣き崩れる美華。


「ウギャアアァァーー!!」
そして完全に壊れ始めてしまった鶴子であった。
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