望美 ~ママ、離れないわよ。私は絶対に!~

それから独立して、渋谷に事務所を設立したのだった。
そういう関連の依頼主達は皆、ローカルでやっているテレビ番組を見てだとか口コミなんかでやってくる方たちばかりだった。

そしてこの男も同じようにテレビ番組の特集を見て、事務所に電話をしてきたのだ……。



男は、
「はい、ユウドキ(テレビ番組)を見て…。」
と言う。


ケイ子は探偵という職業柄、話し相手の容姿から身だしなみを瞬時にチェックするクセがあった。


男は37、8歳ぐらいで、外見はかなりの男前であるが、ケイ子には年相応にしてはゲッソリしているというか、気迫がなく、またガッシリした体格の割に存在感が無く、口調もオドオドしているように感じた。

まるでここ数年間ロクに人と会話などしなかったような感じなのである…。

育ちが良い事は着ている服で分かるが、ブラウスはシワシワでアイロンがかけられてなく、履いている高いブランドの靴が土などのドロで汚れてしまっている点から過去、栄光輝かしかった男が堕落したのだと見てとれた…。


また人間不審、もしくはストレスを抱えている可能もあると。
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