望美 ~ママ、離れないわよ。私は絶対に!~
しかしその後の、男の話の展開には流石にケイ子も理解に苦しんだ…。死んだはずの赤子が、妻の夢の中に現われ、日々成長する…。そんな赤子が必要以上に母親である妻に執着し、愛してくれとせがむ…。赤子は自分の生誕を反対し、潰したやつらへの復讐を誓い始め、その後彼女の呪いなのか、父親が死亡。母親が狂乱し異常を発生……。挙げ句の果てには妻までもが悪夢にうなされる日々を送り、精神に異常をきたし始めているのだと。



……私は、男から発せられるあり得ない話の数々をゴクッと唾を飲みながら聞いていたのでした。
正直、嘘だろうと思いました。
デタラメだろう、私を騙しているのだろうと思ってならないのです。
そして極めつけは本当に信じられず、唖然としてしまう話です。
私はこの男こそ異常者なのでは無いのかと疑ってしまうほどでした。


「来るって……。
戻って来るって妻が言うんだ!!
いや、望美が…、中絶して殺した赤子の女が夢のなかで言うんだと!!!!」
と言うと男は黒い革のカバンから一枚の写真を取り出して来た。

ケイ子はそれを受け取る。

その写真はモノクロだった。

そしてそこには女が一人バストアップで写されている。
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