望美
~ママ、離れないわよ。私は絶対に!~
あったら大変なんだからねッ!!大体、『個人情報保護法』なんかが取り沙汰されちゃって、プライバシーの権利が尊重され始め、私も本当大変……。あぁぁぁ大変!!」
と言い溜め息をついてしまった。
彰一君はガミガミ言われてしまったことをさほど気にしていない様子で、
「…改めます。
それより今度の依頼はどうなんですか?
また熱海の廃墟とか行きたくないですよ……。」
と言っている。
彰一君が言っている熱海の廃墟とは2ヵ月前、テレビ番組の肝試し取材の立会いという形で同行したものだった。
途中出演タレントの一名が謎の吐き気に襲われ、またアシスタントとして同行した彰一君も寒けと吐き気が止まらないという霊障のようなものを起こしたのだった。
大勢で行ったからよかったものの、一歩足を踏み入れるだけで背筋が凍るようにゾクッとした。
廃墟には壁にドス黒い血の跡があった。
ケイ子が察するには昔、この場所で集団リンチ殺人がありその犠牲者の血ということだ。
「まぁ、そっち関係だけれども大丈夫よ!!」
そうケイ子は彰一君に言い聞かせると彰一君は再び書類整理の作業に戻った。