望美 ~ママ、離れないわよ。私は絶対に!~
しばらくすると
「それでは本日麗しき57歳の誕生日を迎えられました、東京石油連合会・会長、川添義郎より御挨拶申し上げます。」
とホールの奥にある壇上に義昭の父・義郎が登場した。


「こんたびは、皆様大変ご多忙の中、このようにたくさんの方々にご出席していただき、誕生日を祝っていただけることを、誠に嬉しく思っております。
皆様ご存じのとおり、私の妻であります、鶴子は、一応女優といたしまして、本日も京都の方で、時代劇の撮影を行っている最中でございます。ええ、わたくしとしては、このような日に妻が別の素敵な男優と撮影をしていると思うと、この歳になっても、ジェラシー(?)を感じてしまいましてぇ……。」


「ガッハッハハ」

場内からは笑いが沸いた。


その時、政子と義昭は豪勢なお食事もそこそこに来客者へ挨拶周りを行っていた。


「おや、君が政子君かぁ。義昭よ、式には出席できなくてすまなかったな。」と運送会社・社長。

義昭はいえいえと謙遜している。

側にいた夫人が「義昭さんから聞いていたとおりのベッピンさんだわぁー。すごく清楚でインテレクチュアルに見えるわね。」
と。


政子は二人のグラスにワインを注ぎながら、
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