朔夜的短編集
ホテルで待つ男
高い所から眺める景色というのはやはり美しい。
私はそう心の中で呟きながら、窓の外を見つめていた。
世界でも有名な5つ星ホテル、その最上階のスイートルーム。
遥か下の地上に見えるのはプールと眠らない街と言われる所以のネオンの群れ。
贅沢を絵に描いた様な景色を眺めながら私は思わず笑ってしまった。
信じられるだろうか。
こんな贅沢の限りを尽くしている国が今まさに転落の一途を辿っているなんて。
一度覚えた贅沢は、死ぬまで治らないということか…。
そんな考えが頭をよぎり、思わず苦笑が零れる。
そして、目線をすぐ近くに置いていたトランクへと移動させた。
全てが高級のこの部屋には似つかわしくない、使い込まれてボロボロになったトランク。
これだけが唯一、私の持ち物だ。
そう、私は決してこのスイートルームに宿泊しに来た金持ちなどではない。
この国の政府に呼ばれ、いきなり案内されたのがここだったというだけだ。
どうやら私は知らない間にすっかり有名人になっていたらしい。
今回もこの国の人間が喜ぶであろうものをこのトランクに入れて持ってきてある。
「この国の方々に、喜んで頂けるといいですねぇ…」
そう言って、私はトランクの表面を優しく撫でた。
お題:『トランク、国、プール』
私はそう心の中で呟きながら、窓の外を見つめていた。
世界でも有名な5つ星ホテル、その最上階のスイートルーム。
遥か下の地上に見えるのはプールと眠らない街と言われる所以のネオンの群れ。
贅沢を絵に描いた様な景色を眺めながら私は思わず笑ってしまった。
信じられるだろうか。
こんな贅沢の限りを尽くしている国が今まさに転落の一途を辿っているなんて。
一度覚えた贅沢は、死ぬまで治らないということか…。
そんな考えが頭をよぎり、思わず苦笑が零れる。
そして、目線をすぐ近くに置いていたトランクへと移動させた。
全てが高級のこの部屋には似つかわしくない、使い込まれてボロボロになったトランク。
これだけが唯一、私の持ち物だ。
そう、私は決してこのスイートルームに宿泊しに来た金持ちなどではない。
この国の政府に呼ばれ、いきなり案内されたのがここだったというだけだ。
どうやら私は知らない間にすっかり有名人になっていたらしい。
今回もこの国の人間が喜ぶであろうものをこのトランクに入れて持ってきてある。
「この国の方々に、喜んで頂けるといいですねぇ…」
そう言って、私はトランクの表面を優しく撫でた。
お題:『トランク、国、プール』