Simply
午後のベルが鳴ると、田中先生と次の教室へ向かう


「試験問題見せてもらった、バッチリOK!

あのままいこう」


歩きながらそう言われてアタシは小さく「ヤッタね!」と両手を握りしめた


またかずまにメールしたくなる


……重症だね、アタシ

THE☆恋の病??


そんな気持ちとは裏腹に、田中先生の憂鬱そうな声が廊下に静かに反響した


「雨がくるよ、西の空が暗い」


アタシも窓から見える西の方角へ目をやった


灰色の雲が空を半分隠している


ほんの少し高くなった湿度まで感じる


晴れの日もあれば

雨の日もある



アタシは「憂鬱になっちゃいますね」と小さく呟く


「長く続かなきゃいいけどね」



そう応えた田中先生の言葉は、雨のことなのか?


それとも気分のことなのか??


ううん、どっちもかな……?



的を射ていて、アタシは田中先生の横顔を斜め後ろからじっと眺めていた

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