Simply
『しばらく会ってなくて寂しくなった?』

「……なった、かも知れない」


素直に答えると、電話の向こうで小さな笑い声が聞こえて…なんかちょっとしばらく忘れていたドキドキがよみがえる


数秒

沈黙が二人の距離を測るように通り過ぎていった


『明日、映画でも行く?』

「行く」


間髪入れずの即答をしてしまう

『ああ…でも、二人で会っても何もさせてくれないしな…どうしよっかな』

アタシが返事に詰まっていると

『ま、いっか、俺も会いたいし』


あ…っと

恋愛初心者か

相手がかずまだと、何も言葉にできなくなる


かずまの声がアタシの不安を取り払って、反対に幸福で満たしていく

ー嬉しい、アタシも早く会いたいー

言いたいのに、声が出ない


『じゃ、明日な』


って電話は切れたけど……


アタシはもう明日まで待ちたくないくらい、会いたいよ



--------------会いたい


なんてアタシ、いつの間にこんな風に思うようになったの……?



最初は“俺の女になることを承諾しろ”って半ば強制的にそうなることを求められたと思っていたのに……


かずまの横で、かずまに縛り付けられていることが甘い快感に変わっていってる




『俺も会いたいし』



かずまの言葉がアタシの耳の奥から胸を何度も撫でた

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