Simply
アタシはふすまの外を指差す


「今のカッコン」

「カッコンて」


かずまは笑いながら熱いお茶を飲むと「ししおどしって言うんですよ先生」と付け加えた


「テレビ以外で初めてきいたんですけど」

「ふすま開けて、本物見てみたら?」

「…………いいですか?」

「…………いいですよ」



アタシは四つんばいでサササ……とふすまに近づいていく



「そのカッコかわいい」



…………はっと首だけで振り返ると、頬杖をついてまたいじわるっぽい目をしてる





前も、そうだった

気づいたらそうやって頬杖をついてこっちをじーっと見てるの

その瞬間に色付く空気とか、彼の視線を感じて胸がちょっとときめいちゃうのとか……


そういうのがどうしようもなくギューっと切なくなる


やば……恥ずかしくなってきた


再びふすまに視線を戻してカッコンを見ようと手を伸ばすと、勝手にふすまが開いて向こうから着物姿の女性が顔を出した


相手がよつんばいのアタシを見て、不思議そうな目で会釈する


愛想笑いを返してバックしますとばかりに再び自分の座っていた場所へともどるのを見てかずまが笑いを噛み殺しているのがわかった


「もう……」


なんて恥ずかしい思いをしていると、目の前に並べられる趣向の凝らされた前菜


おお…やっぱ日本食

食べる前もこうして目で楽しませてくれる

口に運ぶ前から優しい味付けが想像できちゃう

癒される……日本の味

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