Simply
開いた窓から秋の涼しい風が吹き込んでくる

新田くんの前髪が風に揺れると、その隙間からつめたーーい視線が鋭くアタシを射抜く

はじめて目が合ったんじゃないかしら、とその眼光の鋭さに視線をそらせないでいると


「ヒールのある靴履いてねえとちっせえな」



そ、そんな怖い目をして言わなくても……

小さいと言われてちょっとひるむ

そう言われてしまうと彼は身長が高くてなんだか男っぽいし、生意気な口調は大人っぽい


少しドキンとしたのをごまかすように「小さくないよ」と反抗した


「アタシ、身長165センチもあるし」


年下高校生に身長で対抗してるあたり、アタシの方がガキみたい


新田くんはバカにしたように鼻で笑った

「小さいだろ」

「新田くんが大きいだけでしょ?」


けして小さくはないアタシが新田くんを見上げている


「まあ…女としては、大きい方か……」


流れるように視線をそらされてスタスタとドアの方に向かうと、彼は早く出ろといわんばかりに目配せをした


ヒールの折れた靴を両手に握りしめて声をひそめた


「あの……アタシのこと、誰かに話す?」

「別に…誰かに話しても俺にメリットねえし…

ってゆうか、話したら俺のバイトもばれる」


「そっか、そうだよね」

「あんたの弱み握ってると便利そうだし」

「……え?」


…顔をあげてどんな顔をしながら言ってるのか確認すると、目を細めて斜めからこっちを見ている

いじわるそうな表情が見え隠れした


便利って何?


足元から上がってくる寒気は、スリッパの冷たさか

それとも彼のせい……???


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