Simply
「泣きそうなのを、がまんして、こらえきれてないのが……たまんないんでしょ?」


「お前……それ、どこで」


アタシは、嬉しさとおかしさと胸のドキドキでなんだかよくわからない涙を目のふちで拭い去る


「……長瀬か」


「もう一回、呼んで」


「ちひろ…………」



ほんのすこしの距離さえ邪魔


いますぐかずまに触れたいよ



そう思うと、またじわっと涙が出てくる




「…………萌える」




かずまがいじわるな顔でそう言ったのを聞いて、アタシは精一杯のばした二本の腕でかずまに抱きついた

かずまの背中がドアにぶつかって、狭い車が揺れる


「イテテ……」


どさくさにまぎれて、涙をかずまの肩に押し付ける


ギューっとしがみついて、


うーーーーっと何かが押し寄せてきて


キュー-ーンと苦しくて


んん~~~って唸っちゃいそうな



興奮状態



アタシはかずまの首に顔をおしつけて、その匂いをいっぱいに吸い込んだ

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