Simply
手をつないでマンション内を歩いているとかずまがアタシにきく


「あこさんは?」

「彼氏のとこ泊まるって言ってた」

「空気読みすぎだろ」

「さすがに今日は偶然だと思うよ?超能力者じゃないし」


くすくす笑うアタシ、でも胸はドキドキがとまらなくて

落ち着かせようと必死で息を整えてる


……横にいる人は、全然余裕そうで

なんか、悔しい……



玄関に入ると、靴を脱ぐ


「電気、電気」


と壁を探る手を握られて、腰に手がまわったかと思うと……唇が突然あわさった

もう、しょっぱなから深く重なってくる


力を逃がすために数歩下がるとあっというまに壁に突き当たって


「んん……ストップ……」


息継ぎするように離れた瞬間にセーブする


「無理」


それだけ言ったかずまに再び唇を塞がれて、アタシはギュッと目を閉じた



かずまの前髪がアタシの顔を掠める

もうあと少し、そこのドアをくぐればベッドがあるのに……

車からここまでは歩いてこれたのに……


その距離すら無理といわんばかりに、かずまはアタシの首からワンピースをぬいてしまった


玄関で下着姿とか……ありえない


いつも上から目線で、余裕ぶってるくせに……

そんな姿からは想像つかないくらい情熱的で

でも、いっつも強引にアタシを巻き込むあたり……

やっぱり…強引なんだ、と納得もできて



かずまの指が直に体に触れる

その動きを全身が敏感にとらえると、脳内がはじけたように一斉に流れ出した


ああ……もう、いい


こうして求められるのは、イヤじゃない


かずまがアタシを欲しいって思ってくれてるのが伝わってくるから


それをもっと感じたいから……



巡る思考を止めてきつく目をとじると、まぶたの奥がジンと熱かった

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