Simply
「かずま、言ったよね?

私が告白したら“…好きになるかも知れない”って」



かずまは黙ってる



「私のこと、好きになるように努力してみるって、言ったじゃん

……好きになってよ、努力した?」


「悪い」



かずまが間髪いれずに謝って、アタシの体がドキンと固まった



「信じたのに

……いつか好きになってくれるって、思って」


小沢さんがうつむいて伏せられた目から次々と涙がこぼれてくる


アタシまで胸が痛くなる


「小沢さん」


思わず声をかけてしまって、自分でも(しまった)とは思ったけど


「気安く呼ばないでよ!あんたなんか大っきらいなんだから……!」


と怒鳴られた


もっともな対応



小沢さんはかずまに一歩近寄ると、彼の腰あたりのシャツをぎゅっとつかんだ


「これじゃ……体だけが目当てだったみたいだよ」


彼女の言葉が突き刺さる


かずまも困ったように眉間に力を入れている


「……殴って、いいから」


かずまは言いづらそうに、でもはっきりとそう言った


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