Simply
「あっそ」


という声とともに目の端にうつる彼の足が電車へとむかう


発車を知らせるベル



……やばい、なんか虚しくて悔しくて痛い



彼の言ったことは間違ってない

傷つくのはおかしい



やんわりとお酒が入ってることもあって泣くんじゃないかと思って、アタシは電車に背を向けてホームの端へと向かった


電車が走り出す轟音と巻き上がる風


何度もまばたきをしてごまかすけど、やっぱりこらえきれなかった涙が一粒落ちてしまった




「はあ……」




とため息をつくと、それよりも盛大なため息が背後からのしかかってきた



「あんた、マジで先生目指してる?

めちゃくちゃこどもみたいなんですけど」


もう既にいないと思ってた人の声が聞こえる

驚いて振り返ると、相手のほうが驚いた顔をした



「……なんで、泣いてんだよ」


はっと気がついて、あわてて人差し指で目のふちをおさえた


あんまりこするとマスカラが落ちるし、何度もまばたきして涙を引っ込める


「俺のせい?」


「あ、いや…そうじゃなくって…なんか、情けなくて」


「情けない…ねえ…まあこんだけ人に迷惑かけりゃ、そうだろうな」



いちいち、突っかかる言い方……


アタシが言葉を続けようとすると、また駅構内にアナウンスが流れた


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