Simply
「罰としてそのままでいろ」


早足の彼の後ろをしょんぼりと存在を消してゆっくりついていく


すれ違う人達がアタシのおでこを見てクスクス笑っている


大学生風の男性グループがこっちを見て「カワイー♪」なんて冷やかす声


それが聞こえたのか新田くんはすごい勢いで振り返ると高速で戻ってきて


「いつまで貼り付けてんだよ!」

と頭上で怒鳴って切符を取り上げた



そのままでいろって言ったじゃん

意味わかんない!


ってゆうか、頭ごなしに怒鳴らないで……


アタシは体を強張らせたまま口をこっそり尖らせた


新田くんはその切符を持ったまま今度はアタシと並んで歩く


横から感じる威圧感に圧されて人ひとり分開けるように離れると、横目が突き刺さってきた


「そのまま落ちんなよ」


え?と足元を見ると、けっこうホームぎりぎりのところを歩いている


これ、ちょっとツンって押されると落ちそう……


そう思うと今度はそれも怖くなって、やっぱりもうちょっと新田くんの方へと近づいた


怖くて横が見れません……


なんて考えていると、新田くん側の手を握られた


瞬時に頭がついていかなくて「?」の浮かぶ目で握られた手を見つめる


「頼むから俺の近くで大人しくしててくれ」


斜め上から聞こえた声に、アタシは新田くんの顔を見上げると「落ちられた方が迷惑」と押し込められた

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