Simply
「おい!」


ものすごい勢いで腕をつかんで引き寄せられると体が半回転する


あたしの腕をつかんだ手と反対の腕が腰にまわってがしっと固定された


びっくりして「おおッ!」ってかわいくない叫び声をあげる


元いた場所よりも新田くんに近い位置

彼の長い指があごにそえられアタシの顔がぐいっと上に向く

背の高い新田くんと至近距離で視線がぶつかる



「頼むから、おとなしく言うこと聞けない?

同じこと何度もいうの嫌いなんだけど?」


バカ扱いのぶち切れな言葉なのに、切れ長の涼しい目は細められてアタシの唇をみつめるから、アタシの心臓が突然大騒ぎをはじめた

あんまりにも驚いて喉が詰まったように声が出ない

思わずその体勢のまま視線を横へと逃がした







何、この展開!!

居心地が悪くて腰にまわされた腕から逃れようと体をよじると、さらに強く引き寄せられる


なんで抱き寄せられてんの??


「暴れるな」


新田くんの怒った口調は効果絶大


アタシはぶんぶんとうなずく


言うことをきかないアタシを試すかのようにゆっくりと腕の力が抜けて、密着していたからだがようやく離れていく


小さく息をついて、自分のカバンを胸に抱くように少しでも彼との距離をあけようとするけど、新田くんの腕から力が抜けたってだけで腰に添えられた手がいつまでも離れないから……


思わず

「あの……」

と顔色を盗み見た

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