Simply
店についたのはもう21時過ぎ


荷物を置きに控え室に入ると、化粧台の前のスツールに座ってため息をついた

少しだけ化粧をなおして髪をととのえる

そして気合を入れなおして席に戻った

ちょうどお手洗いから戻ってきた前田さんにちづるさんがおしぼりを手渡している


アタシの姿に気づいたちづるさんが店に響きわたる大きな声

「マキ!そのドレス似合ってる~!」


恥ずかしくなって、慌てて前田さんの横に腰をおろした


「ほんとですか?

ちづるさんおっぱいおっきいから、アタシ胸のところがスッカスカなんですけど」


ちづるさんが水割りを作りながら吹き出した

「タオルでもつめこめばよかったのに」

「ひど!!」

アタシ達の会話を聞いて前田さんは苦笑い



週末ということもあり店は満席状態で、ちづるさんは乾杯もせずに別の席へとついてしまった

前田さんがネクタイをゆるめながらシートにもたれかかる


「今日はなんだか全くお役に立てなくてごめんなさい」

「十分だよ、マキがいてくれたおかげで“早く結婚しろ”って言われずに済んだ」


そう言うと笑ってくれて、なんだかちょっと安心する


「疲れたでしょ?ビール一杯くらいどう?」

「えっ??」

「小さいグラスに一杯くらいなら大丈夫でしょ?」


遠慮する前に、前田さんは近くにいたボーイさんを呼んで…ってかずまだけど、ビールとグラスを二つ注文してしまった


持ってきたかずまが一瞬だけチラリとこちらを見る


「はい、これくらいなら大丈夫大丈夫」


と前田さんにグラスを差し出されて、そこになみなみとビールが注がれていった



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