Simply
黄金色のビールが、店内のオレンジ色の照明に照らされて輝いている


アタシも前田さんの手からビール瓶をとってお酌する


「じゃ、改めて」


と前田さんはグラスを慎重に揺らす


アタシもグラスを持ち上げて「おつかれさまです」というと、あふれそうな泡同士がぶつかって離れていった


お愛想程度をゴクリと飲む


「疲れてる時のビールは格別でしょ?」


前田さんはそう言って自分のグラスのビールを一瞬で飲み干した

アタシは再び空いたグラスにビールを注いでいく


「ねえ、マキ」


落ち着いた声で名前を呼ばれる



「また今度パーティがあったら一緒に行こう」


アタシは笑顔で「もうちょっと勉強しときます」とうなずいた


「そのときは、婚約者って紹介できればいいな」


「え?」


返答に困るのは、今日二回目

ビールを手に持ったまま動けなくなる

そう、前田さんはアタシのこうゆう反応をものすごく可笑しがる

彼はふふっと笑った


「やきもち焼きの誰かさんに怒られるか……」


前田さんの言った言葉の意味がわからずアタシが止まっていると、アタシの髪に手が伸びてきて……

指先がアタシの首に触れた


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