Simply
この学校で今日から教育実習をするのはアタシともう一人女性、そして男性の三人いた


職員室で軽く挨拶がすむと、担当するクラスの発表


アタシが担当する3年C組の担任の先生は校門で出会った城田先生だった


体育教師らしい短い髪

30代後半だろうけど、ジャージを着ているから幾分若く見えている気がしする

スポーツマンらしく爽やかに微笑まれてアタシも笑顔を返した


教育実習の面々を紹介するために臨時の集会が行われるらしく、講堂に生徒が集合させられていた

そこへ向かうために他の教育実習の二人と歩いていると、女性の方に声をかけられる


「モデルさんみたいですね」

「え?!いや……背が高いだけで」

「うらやましいな、わたし小さいから」


確かに小さい彼女は靴もぺったんこのヒールなし


アタシは身長165センチあるのに、さらに5センチ以上はあるピンヒールを履いているからなおさら長身に見える



講堂に入るとたくさんの生徒が並んでいて一気に胸がバクバクし始めた


校長先生から教育実習生がきている旨の説明があって自己紹介


こんな大勢の前で話したことなんてないんですけど……

どうしよう、挨拶して名乗って、よろしくお願いしますだけでいいのかな

と、とにかく緊張を悟られないようにしっかりと背筋をのばして……

頭の中があれやこれやと大騒ぎ


アタシが壇上にあがると、ヒールの音がカツカツ響いた

生徒の誰かが「うお!ハイヒールっ!!踏んでほし~」なんて冷やかす声

笑う生徒達の声が聞こえる


アタシ、女王じゃないし……頭の中でつっこみながら


「おはようございます
真木ちひろです、担当教科は現代国語、短い期間ですけどよろしくお願いします」


と短いセリフを言い終えると、また冷やかしの声が聞こえた


「勉強以外のことも教えて~」


城田先生が「こら!だまれ!」なんて怒鳴っているのをどうすればいいのかわからず見つめていた


学校ドラマみたい



動きを止めたままのアタシの方を城田先生が見た

あ、立ち退かなきゃ!


軽く頭を下げて壇上を降りるために歩くと響くヒールの音


なんだかやたらと響く気がして恥ずかしくなって、足音がならないように少しだけふわふわと歩いた



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